Love Happeningという映画を観た。

Love Happeningという映画を観た。


妻を不慮の事故で亡くした男が、その妻の死と向き合い、悲しみを乗り越えるまでを綴った本がベストセラーとなる。男は自己啓発セミナーやワークショップに引っ張りだこで、アメリカ中を飛び回るちょっとした有名人だ。そんな男が、講演で滞在していたホテルで、花屋の女と出会うところから物語は始まる。実は男は、最愛の人を失った人々を相手に講演をしながら、彼自身の傷は癒えておらず、失った妻の父(彼にとっては義父)とのあいだにも確執を抱えている。また女は、ずっと夢であった花屋を経営し、仕事では順風満帆だけれど、好きになるのはダメ男ばかりで、また恋に破れたところだった。

物語は、二人の出会いを軸に、だんだんとお互いが惹かれあうラブ・ロマンスなのだけど、この映画には、「男がついてきたウソ」が次第に明らかになってくる、という、謎解きの要素もある。

 

 

男は妻の死に関して、或るウソを、自分自身に対してついてしまう。
あまりに重い喪失の悲しみと罪の意識が、彼に「ウソの物語」を採用させた。起きたことをありのままに受けとめることができず、その後の自分を生かすために、彼が採用した「ウソの物語」がベストセラーとなり、親しい人を失った悲しみに向き合おうとする人たちの「救い」となることによって、彼自身の苦悩は、逆に深くなる。自分自身は、実は、その死と向き合っていない、という意識が、しだいしだいに大きくなっていくのだ。

 

どれだけ、周りをうまく騙せても、自分自身だけはほんとうには騙すことはできない。と、いうか、周りも、ほんとうには騙せてはいないのだ。彼のウソにつきあって、彼の身を心配してそばを離れない友人、自分もダメ男との恋に破れてばかりでボロボロだけど、あなたもボロボロね、と、「売れっ子のベストセラー作家」という彼のかぶった皮ではなく、ほんとうの姿を見つめる女。人との交わりのなかで、男は、自分自身と向き合う勇気を得ていき、聴衆の前で真実を明らかにする。

 

とりかえしのつかないこと、というのが、人生にはある。でも、そのとりかえしのつかない、ということに対して、とりかえしがつかないからという理由で、ウソの物語でくるんでしまうことは、人を二度殺すようなものだ。事実を事実として見つめきるところからしか、未来は始まらない。