共通の話題

やっと、仕事が休みに入った。


この前病院に行ったときに助産師さんから、「あら、休みに入るのちょっと早いんじゃな い??」と言われたのだけど、たしかに、法律の定めでは「産前6週間」とあるから、それ よりは十日ほど早いことになる。ちょうど前期末試験が終わるタイミングだったので、 少し早めの産休、ということになったのだけど、正直、この酷暑なので、はやめに休みに 入ることができてありがたかった。産前6週間といったら、ちょうど今にあたるわけなん だけど、テキストやプリントではちきれそうに膨らんだ鞄を抱えて、弁当を持って、往復 2時間の距離を電車で通い、90分授業を2コマ、というのを今やれと言われたら、それ はしんどいわ、と思う。法律の定める期間には、ちゃんと意味があるのである。


休みに入ってからは、最低限の家事と引継ぎの連絡などの残った仕事をする以外は、うち でひたすらじっとしていた。23歳で働き始めてから、途中大学へ戻ったり、アルバイト生 活をしながら劇団の活動をしたりしてきたけど、つねに「仕事」というものはあって、そ の「仕事」がない、というのは初めての感覚で、「次の仕事のこと」を考えなくてもい いというのは、心底ほっとすると同時に、何か、自分が宙にぷらーんと浮いているよう な感じもする。でも、仕事のラストスパートで、思っている以上に心身疲れていたし、お 腹の中のヒトにも、ちょっとがんばってもらいすぎちゃったかな、という思いもあったの で、今は、この宙ぶらりんの時間を、人生でいちばんゆっくり過ごそう、と、昼日中から 布団に横になり、大きなお腹の下に座布団を挟んで、さなぎのようにじっとしていた。


それでも、2、3日もすれば、身体中にエネルギーが満ちてきて、何かしたくなってくる 。実際問題、通勤がよい運動になっていたのも事実で、少し休んだだけなのに体重がみる みる増加した。21週時の検診で、助産師さんに「体重管理を!」と戒められて以来、ち ょっと意地になってキープしてきたのに、増えるときにはドーンと増える。それで、3日 間のさなぎ期間ののち、おもむろに早朝の散歩を始めた。うちの玄関を出てすぐ、山の中へ入っていく自転車道があって、朝夕問わず、自転車はもちろん本気のラン ナーやウォーキングをする人が行き交う。さすがに、早朝の5時半にはそこまで人もいな いかな、と決行してみたら、早朝でも少なくて3人、多いときで5、6人の人と行き交う 。鮮やかなスポーツウェアに身を包んで軽快に走るひとや、両手にトレッキング用かなに かの杖をついて歩くひとに交じって、こちらは、オバQのようにてろん、としたワンピー ス一枚で、大きいお腹を突き出してぽてぽてと歩いていると場違い感があるのだけど、み んな、とおりすぎざまに、何かに納得するようなやさしい視線を投げかけてくれる。妊婦特権?


早朝の散歩は、今のところ三日坊主になることなく続いている(まだ6日目だけど)。そ のおかげか、ここにきて痛みの増していた腰痛もちょっと楽になった。でも、別の問題が 発生していて、仕事が休みに入ってから、便が出にくい。妊娠前は便秘知らずだったのだ けど、妊娠してすぐ、思うようにお通じがこなくなった。べつに、薬を飲まない主義でも なんでもないのだけど、もともと、お腹をすぐ冷やしてゆるくなることはよくある体質で 、便を軟らかくする薬の威力に、必要以上にびびって、ここまで、せっかく処方してもら った薬を使わずにきていた。あと1日出なかったら飲む、と言い続けて、いつもぎりぎりで出るのだけど、今回は、出ない。そこでついに、今日は薬を使用した。服用から5時間 、まだ便は出ない。オットは、そんなに即効性のある薬じゃないよ、と冷静な意見を述べ てくる。


便の話ついでだが、家の中に介護を必要する老人がいると、家族のなかで便の話題が増え る。無事に便は出たか、出なくなって何日目だ、そろそろマグミットを使うか、こーラックはまだやめておこう...こういった会話が日常会話になる。すべての在宅介護の家庭 でそうだというわけではないだろうけど、オットは実母の介護でも、直接的な下の世話以 外はぜんぶ参加しているので、そういう情報共有が行われる。そこへヘルパーさんやデイ の送迎の方たちとも、共通の話題は、便。それに加えて、妊婦のわたしの便の動向もいち いち報告され、もう少しすれば、新生児の便の話題も加わるだろう。女三世代(お腹の中のヒトは女の子)の便の話を聴かされるオットは、どんな心境なんだろう。

 

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写真は、今朝の早朝散歩時の空。